概要|脳神経外科

当院・宇田憲司医師が筆頭著者を務めた英文医学論文が国際誌に掲載

当院 脳神経外科・脊椎脊髄センターでは、日々の診療から得られた知見を臨床研究として検証し、国内外へ発信しています。
このたび、当院 脳神経外科・脊椎脊髄センターの宇田憲司医師(脳神経外科部長)が筆頭著者を務めた5編の英文医学論文が、国際医学誌に掲載されました。

いずれも実際の診療経験から得られた知見をまとめたもので、骨粗鬆症性脊椎骨折に対する低侵襲治療、重症脊椎・骨盤外傷から、脳動脈瘤クリッピング、脳血管バイパス手術まで、脳神経外科の幅広い領域にわたる研究成果です。

1.骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対する椎体形成術

Clinical Outcomes of Vertebral Body Stenting for Osteoporotic Vertebral Fractures: Focus on Collapse Prevention and Magnetic Resonance Imaging-Based Indication

骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対する椎体ステント形成術(Vertebral Body Stenting:VBS)の治療成績を検討し、適切な症例を選択することで、低侵襲な治療で良好な成績が得られることを報告しました。

骨粗鬆症性脊椎骨折に対して、できるだけ患者さんの身体的負担を抑えながら、椎体形態を維持し、良好な治療成績につなげるための研究です。

Uda K, et al. Global Spine Journal.
DOI: 10.1177/21925682251370280
Open Access: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12367707/

2.椎弓根骨折を伴う骨粗鬆症性椎体骨折に対する低侵襲治療

Early Minimally Invasive Treatment of Osteoporotic Pedicle Fractures

椎体だけでなく椎弓根にも骨折を伴う不安定な骨粗鬆症性椎体骨折に対し、椎体形成術と経皮的椎弓根スクリューを組み合わせることで、広範囲の固定術を行わずに安定性を得る低侵襲治療を報告しました。

高齢の患者さんなど、必要な安定性を確保しながら、できるだけ手術侵襲を抑えることが求められる症例に対する治療選択肢の一つです。

Uda K, et al. Surgical Neurology International. 2025;16:283.
DOI: 10.25259/SNI_534_2025
Open Access: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12361667/

3.脳動脈瘤手術に用いられる杉田クリップの有効性・安全性に関する多施設研究

Effectiveness and Safety of the Sugita Clip for Ruptured and Unruptured Intracranial Aneurysms: A Retrospective Cohort Study

脳動脈瘤手術で世界的に広く使用されている杉田クリップ(Sugita clip)について、多施設の破裂・未破裂脳動脈瘤症例を調査し、その有効性・安全性やクリップに関連する不具合について検証しました。

新しい治療法だけでなく、長年にわたり日常診療で使用されている医療機器についても実際の治療成績から検証し、より安全な脳動脈瘤治療につなげることを目的とした研究です。

Uda K, et al. Surgical Neurology International. 2026;17:54.
DOI: 10.25259/SNI_1222_2025
Open Access: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12954272/

4.両側椎骨動脈解離性動脈瘤破裂に対する外科・血管内複合治療

Ruptured Bilateral Vertebral Artery Dissecting Aneurysms Involving the Posterior Inferior Cerebellar Arteries: A Combined Surgical and Endovascular Strategy. Illustrative Case

左右両方の椎骨動脈に病変があり、さらに両側とも小脳への重要な血管である後下小脳動脈(PICA)を巻き込んだ、極めて治療困難な両側椎骨動脈解離性動脈瘤破裂の症例を報告しました。

bilateral condylar fossa approachにより破裂側を術中に特定し、PICA–PICA bypass、OA–PICA bypassを組み合わせて小脳への血流を確保したうえで外科的治療を行いました。その後の対側病変に対しては血管内治療を行い、良好な経過を得ることができました。

開頭手術、脳血管バイパス術、血管内治療それぞれの特徴を生かし、複雑な病態に対して治療戦略を組み立てた症例報告です。

Uda K, et al. Journal of Neurosurgery: Case Lessons. 2026;12(3):CASE26347.
DOI: 10.3171/CASE26347
Open Access: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13383578/

5.重症仙骨骨折に対する低侵襲Inline Spinopelvic Fixation

Minimally Invasive Inline Spinopelvic Fixation Without Offset Connectors for Non-osteoporotic Unstable Sacral Fractures: A Single-Center Case Series

高エネルギー外傷による治療困難な不安定型仙骨骨折に対し、従来のoffset connectorを使用せず、構造をシンプルにしながら強固な固定を目指したminimally invasive inline spinopelvic fixationを報告しました。

手術手技だけでなく、術後の歩行能力、神経症状、骨癒合などの臨床経過についても検討し、複雑な仙骨骨折に対する低侵襲治療の一つとして、その治療成績を報告しています。

Uda K, et al. International Journal of Spine Surgery. Published online September 28, 2026.
DOI: 10.14444/8962
Open Access: https://www.ijssurgery.com/content/early/2026/09/28/8962

研究成果を今後の診療へ

今回の5編は、骨粗鬆症性脊椎疾患、脊椎・脊髄外科、重症脊椎・骨盤外傷、脳動脈瘤クリッピング、脳血管バイパス手術と、脳神経外科の幅広い領域にわたっています。

当院では、日々の診療から得られた治療経験や工夫を臨床研究として検証し、その成果を国内外へ発信するとともに、そこで得られた知見を実際の診療へ還元することを大切にしています。

今後も、脳血管障害から脊椎・脊髄疾患まで、一般的な疾患はもちろん、治療の難しい症例や重症例に対しても、それぞれの患者さんに適した治療を提供できるよう、診療・研究の両面から取り組んでまいります。

【過去の受賞実績】脳神経外科 宇田医師が国際学会で「Best Poster Award」を受賞

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主な症状・病名

脳血管障害(脳卒中)、脳腫瘍、頭部・脊椎(首〜骨盤)外傷、脊椎脊髄疾患など、ほぼ全ての脳神経外科疾患

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患者さんへのメッセージ

くも膜下出血、脳出血、脳梗塞などの脳卒中は、サイレントキラーとも呼ばれ、前触れもなく急に発症倒れることが多く、日本人の死亡原因の上位にも名を連ねる危険な病気です。こうした病気を防ぐには、高血圧、糖尿症、高脂血症、喫煙などのリスク因子を減らしていくことが重要です。

くも膜下出血のほとんどの原因は脳動脈瘤(脳の血管の一部が風船のように膨らんだもの)の破裂です。出血している場合は緊急で手術をしますが、出血していなくても、大きく破裂するリスクの高い動脈瘤は手術が必要です。一方、極めて小さなものや破裂するリスクの低いものは経過観察します。動脈瘤の破裂を防ぐ手術には2つの方法があり、開頭によるクリッピング手術と、カテーテル治療によるコイル塞栓術があります。当院ではいずれの治療も可能であり、動脈瘤の形状や部位により、最適な治療を選択しています。

脳梗塞は脳の血管が詰まって起きる病気ですが、食生活の欧米化に伴い頚動脈などの太い血管にコレステロールが沈着した結果、脳への血液が悪くなって起きるタイプの脳梗塞が増えてきています。治療は、コレステロールが貯まって厚くなった血管内側の壁を手術で取り除いて広くする内膜はく離術と、狭くなった血管の中にステントをいれて拡げる血管内手術を行っています。当院ではこれらの両方が可能です。

さらに最近は高齢化に伴い、首や腰など背骨の変形によって神経が圧迫され、手足が動かしにくい、あるいは痛み、しびれに悩まされる人が増えてきています。いわゆる、脊椎脊髄(せきついせきずい)疾患です。これらの病気は脳卒中と違いすぐに生命に関わると言うことはありませんが、日常生活をおびやかす原因となる重要な疾患です。脳外科で背骨の治療をするというと違和感があるかもしれませんが、痺れや痛みの症状は背骨の中にある神経が原因で生じることが多いのです。そのため、神経のことを熟知した専門の医師が治療を行う必要があり、当院では脳神経外科で対応しています。

2025.8更新