当院のICT化
|
ICTのマネジメント 当院の情報管理センターは、専従職員7名で構成されており、ほぼ全員が医療情報技師の資格を有しています。ICTのマネジメントを担う人材の能力で①病院情報システムやICT技術に関する専門的な知識②ネットワークを設計管理しトラブルを解決できる能力③病院経営の視点から各診療部門の要望をまとめる調整力④ベンダーに対してきちんと要望を伝える能力などが重要です。このマネジメントが医療や経営の質の向上につながることを念頭に置き、ICT化に取り組んでいます。 病病・病診連携を「エキサイネット」で繋ぐ 医療費抑制と機能分化という新しい時代の中で、地域における急性期病院として役割を果たすためには、地域の医療施設と積極的に連携していくことが重要です。当院では2002年オーダリングシステム、2005年には電子カルテ・PACSシステムを導入し、院内での効率化を実現しました。さらに病院情報システム(HIS)の医療情報を医療情報連携システム(エキサイネット)を介して医療連携機関と共有し、紹介・逆紹介に関わる情報、救急患者の受け入れ状況、経過等もリアルタイムに利活用できるシステムを構築し運用しています。セキュリティ面では、システムの進化に合わせてネットワークも改良しています。当初は、ダイアルアップで各診療所から接続していましたが、現在はUSBトークンPKI +SSL- VPNへと大きく進化し、セキュリティ面の向上だけでなく連携医療機関の通信環境に左右されることなく、簡便にインストールが可能となりました。(図1を参照)
現在、診療所の医師約102人のほか、院内の医師約86人が利用しており、ユーザーの多くは中川区の医療機関です。(図2を参照)
主な機能は以下に示します。(図3を参照)
特に院内の医師の場合、深夜に運ばれてきた救急患者の検査結果を自宅で確認し、病院に駆けつける前に初期対処や治療の準備についての指示することで迅速な救急医療が可能になりました。(図4を参照)
また、災害時にもエキサイネットは役立ちます。避難所に見えた患者さまが、「普段飲んでいた薬がわからない」など、エキサイネットを利用して、その患者さまに処方されていたお薬や、アレルギーなど、様々な項目を確認する事が可能です。(図5を参照)
さらに避難所にて撮影したレントゲン画像をエキサイ会病院に送信し、専門医による遠隔画像診断も可能となります。(図6を参照)
|
|
エキサイネットで結ぶ地域医療連携クリティカルパス 地域における急性期病院として当院と医療連携機関でエキサイネットを双方向の利活用することを目的として地域医療連携クリティカルパスを電子化しました。基本となる入力項目は紙運用時代を踏襲しており、入力の精度を上げるために直接入力は避け、ドロップダウンリストなどで選択方式を多用しています。また各職種の入力の進捗状況を表示し入力管理がスムーズに行えるようにしました。紙運用時代との大きな違いはサーバーに集積された非構造化データを、誰もが扱いやすい形式にアウトプットできる点です。(図7・8を参照)
|
|
傷病者集約システムと電子カルテを連携 2005年より多数の病院・消防関係者・医師会・ボランティアの参加のもと「傷病者情報集約システムを利用した大災害時傷病者受け入れ訓練」を行っています。従来の大災害時患者受け入れ訓練では、傷病者受け入れ人数、受診者数、入院患者数、余剰設備(手術室・人工呼吸器)などのリアルタイムな状況把握が難しく、このような環境下と限られたスタッフで傷病者の医療情報を集約・整理することは大変困難な作業でした。災害拠点病院である当院は、この命題をクリアするために、IT技術を駆使した傷病者情報集約システムを開発し、実際の訓練での実用性について検証しました。(図9を参照)。
大規模災害時に問題になるのは、情報の錯綜(さくそう)であり紙の運用では情報が分散してしまいますが、電子カルテで一元化できればこうした問題の多くを解決することができます。 情報の一元化によって例えば、「どういう状態の患者が何人運ばれてきたのか」、「どのような診療行為がなされたか」といった情報がすぐに分かり、効率的に患者を治療することが可能となります。またこのシステムで特に特徴的なのは、電子カルテと患者の位置情報を連動させている点です。医師が症状の重さやカルテ番号などをキーにして患者の位置を把握できるほか、病院に駆け付けてきた家族に患者の位置・状態情報を提供するために利用されます。(写真1を参照)
災害時、家族の問い合わせ対応に職員が時間をとられ、現場が混乱するケースは少なくありません。本システムより得られる位置情報によって傷病者の安否情報の効率化に大いに貢献できるものと考えています。 患者の位置測定にはエカハウ社が開発した無線LANタグを使用しました(写真2を参照)。このタグがサーバーに対して、周囲のアクセス・ポイントのSSIDと信号強度を送信し、三角測量の要領で位置を割り出します。
訓練終了後のアンケートの結果では、「検査に行って帰ってこない傷病者の位置の把握ができ、傷病者の取りこぼしがないかの確認ができた。」「傷病者家族への情報提供に役立てられた。」「転帰がわかるようになったところが良かった。」などの意見があげられ、この傷病者情報集約システムから得られる情報に基づき、迅速かつ効率的な救急活動を行う事ができました。電子カルテに関しては、医療情報の記載やオーダーより、訓練の事後検証が行えるようになり、今後の訓練のあり方について大変良い参考となりました。 |
|||||
| 情報管理センター長 奥村幸光 |


図1 エキサイネット概念図
図2 ユーザー分布状況と地域連携クリティカルパスの実績
図3 エキサイネットの各機能


図7 地域連携クリティカルパスの運用フロー
図9 傷病者集約システムと電子カルテ概念図
