ウェブマガジン「The Ekisai Times」

New Post|2024.02.14

エキサイ人のおすすめ

もう一歩、前へ。

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もう一歩、前へ。

救急車によって名古屋掖済会病院に搬送される患者様は、年間約1万件にもおよびます。その受け入れ窓口は、「救命救急センター」です。
今回は北川喜己新院長が、今後の抱負と救急医療にかける思いをお話しします。

現場に駆けつける救急医療を実現し、救える命を少しでも増やしたい。

2020年12月、当院の救命救急センターに東海北陸地方では初となる「ハイブリッドERシステム」が導入されました。このシステムは、症状の重い患者様に移動をお願いすることなくベッドに横たわったまま放射線撮影、CT撮影、カテーテル治療などを行える先進的なシステムです。これが大活躍しており、救える命が増えたことを大変喜んでいます。

コロナ禍においては、救急搬送が増加し、病院のベッドはつねに満床状態。その中で、コロナの患者様はもとより、それ以外の病気やケガで運び込まれる患者様に対応しなければならず“断らない医療“をモットーとする当院の底力が試されるような局面が何度も訪れました。しかし、スタッフが力を合わせ様々な工夫を重ねていく中から、私たちがめざす救急医療の新たな道のようなものが見えてきたような気がしています。

北川喜己医師

”攻める“救急医療をめざして

北川喜己医師

私たち医師は、消防署から連絡を受け、救急車で運ばれてくる患者様を病院で待って受け入れるのが一般的な流れです。極めて緊急性が高い場合には、救急車が病院に立ち寄り、医師を乗せて現場に向かうこともありますが、ここに費やす時間をもっと短縮できないだろうか。当院の救急医療にあたる医師やスタッフたちは、日常業務の中でそんな課題を感じていました。1分1秒の違いで救えるはずの命が救えなくなってしまう。救急医療の現場は、そんな緊張惑とつねに向き合っているからです。

そこで、病院から医師が直接現場に出向いて一刻も早く処置をはじめられる”攻め“の救急医療を実現するドクターカーの導入が検討されることとなりました。2022年末ごろの実現をめざして病院救急車のクラウドファンディングをはじめましたが、当院の救急医療にあたっている救急科の若手医師たちは、すでにその先を見ており、「いずれはドクターヘリを」「重症外傷センターの開設を」と、熱く救急医療の未来を語り合っています。その情熱には、私自身も感服しています。

苦しい、疲れた、もうやめたでは、人の命は救えない

2021年からは愛知県医療体制緊急確保チームの統括官をお引き受けし、クラスターの発生した高齢者施設などを訪問して対応策の提案やアドバイスに当たっています。このような状況下では定期的に休みをとることは難しいのですが、たまの休日には20歳過ぎになる娘と西尾市のイチゴ農園が開いたカフェまで車を走らせ、大きなイチゴがたくさん飾られたパフェを食べるのを楽しみにしています。最初は「パフェ?」などと照れたりもしたのですが、これがなかなか美味しいのです。どうやら、大きなパフェを前に娘とたわいのない話をしている時が、一番の癒しの時間になっているようです。救急医療における緊張惑には独特のものがあり、特にコロナ禍という特殊な状況下では意欲が沈みかけることもあります。そんな時に思い出す言葉は、「苦しい、疲れた、もうやめたでは、人の命は救えない」です。これは、海上の救難訓練で出会った海猿たちに教えてもらった言葉です。彼らは海上保安庁の職員として厳しい訓練を続け、人命救助に当たっている人たちです。強靭な体と心を持つ彼らの活動には頭が下がるばかりですが、私たち救急医も立ち止まってはいられません。これまで以上にアクティブに、いち早く命を救える医療を実践していこうと思っています。

(文章中の肩書はインタビュー時のものです)

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