外科でのロボット支援手術

消化器外科におけるロボット支援手術

ロボット支援手術は当初は泌尿器科の手術を中心に始まった手術ですが、2018年4月に保険改定があり、消化器外科領域の多くの手術(食道がん、胃がん、直腸がんの手術など)で保険適応となりました(以前はダヴィンチでの手術を希望されると自費診療になったため自己負担が200-300万ほど必要でした)。その結果、現在消化器外科領域ではロボット支援手術の件数が急速に増加しつつあります。名古屋掖済会病院 消化器外科では2019年1月より『ダヴィンチ』(da Vinci X Surgical System)を使用したロボット支援手術を開始しております。現時点ではロボット支援直腸切除術・直腸切断術(直腸がんの手術)と幽門側胃切除術・胃全摘術(胃がんの手術)を行っており、大きな合併症もなく良好な治療成績をおさめております。『SAFETY FIRST(セーフティーファースト)』をモットーに医師、麻酔担当医師、看護師、臨床工学士で構成された消化器外科ダヴィンチメンバーで、一人一人の患者様に最善の治療を届けたいと思います。

ロボット支援直腸切除術・直腸切断術

ロボット支援直腸切除術・直腸切断術とは直腸にできたがんに対する治療です。直腸切除術では、直腸と周りのリンパ節を切除した後、残った直腸と結腸を吻合します。直腸切断術は肛門に近いがんに対する術式であり、直腸を切除した後、人工肛門を作成します。腹腔鏡手術などに比べて直腸におけるロボット手術のメリットは、骨盤内という狭い空間でも、鉗子の先を自由に曲げることができるため、より安全に手術可能であることと、ロボットが自動で手振れ補正をしてくれるため、細かく精細な作業をすることができます。そうした結果、直腸の手術で低下する性機能/排尿機能を温存することができるといわれています。

ロボット支援幽門側胃切除術・胃全摘術

ロボット支援幽門側胃切除術とは胃の出口側(十二指腸側)にできた癌に対する手術であり、出口側の胃と周りのリンパ節を切除し、残った胃と十二指腸(場合によっては小腸)をつなぎ合わせます。ロボット支援胃全摘術とは胃の入り口側(食道側)にできた癌に対する手術であり、胃全部と周りのリンパ節を切除し、食道と小腸をつなぎ合わせます。胃がんのロボット手術におけるメリットは、①術後の合併症の中でも厄介な膵液漏が少ないことです。これはロボット手術では鉗子の先を自由に曲げることができるので、膵周囲のリンパ節を取ってくるときに、腹腔鏡手術に比べて膵臓をおしたりひっぱったりする必要が少なく、膵を損傷しにくいためとされています。②縫合不全(縫い合わせたところから、胃液腸液などがもれる事)が少ないことです。これは胃と腸をつなぎ合わせる際に、腹腔鏡手術に比べてロボット手術では自分の手を動かすようにロボットの手が動いてくれるため、針糸で縫い合わせる操作が非常に簡単にできるからです。